ジャズヴォーカリストのための譜面販売

ジャズボーカル用の楽譜を販売しています。ジャズスタンダードに関する記事も書いています。

But Not For Me

このページを開設してから1か月半くらいが経ちました。
8月9月が何かと忙しかったため、なかなか手を入れることができませんでしたが、時間をみていろいろと更新していきたいと思います。
前にも少し書きましたが、こうやってジャズスタンダードのコード進行というものを細かく見ていくと、本当にいろんなことに気がつきます。そういったことを少しずつ備忘録的に書いていきたいと思います。
But not for me。言わずと知れた、ガーシュインの有名なジャズスタンダードです。ジャズボーカルの大御所的な人が多く歌っていますし、日本でもプロ、アマ問わずジャズボーカリストのあいだでは、まあまあ定番になっているのではないでしょうか。
これだけよく歌われる曲なのに、コーラスの出だしのコードがはっきりしない、というのが割と有名な話です。
通例、セッション(ボーカルも含め)で使われるのはⅡ7のコードですが、有名なボーカリスト、例えば、エラフィッツジェラルド、サラボーン、フランクシナトラ、トニーベネット、チェットベーカー等は、1つ目のコードはみなトニックコードです。アーマッドジャマルの有名なバージョンもそうですね。
なぜこういうことが起きるのか、謎ですが、まあ大体この類のミステリーの裏には帝王マイルスが絡んでいることが多そうです。つまり、マイルスがこの曲を取り上げた時にコードを自分の好みに直して使用し、その後、ミュージシャンが皆それに倣った、というようなことです。はっきりしたことはわかりませんが、実際その可能性はなくもないのではないでしょうか。
ただ、いずれにしても一つ言えることは、ある曲に付いているコードに長年親しんでいると、それと違うコードでやってみると、非常に違和感を感じてしまう、ということです。雰囲気を意図的にガラっとかえたアレンジもの、ということであれば、気持ち的にも順応できたりしますが、そうではない場合、つまりbut not for meの例のようにⅡ7をトニックでやる、みたいなことは、どうしても違和感を覚えてしまいます。
こちらに掲載したbut not for meは迷った末、最初のコードはトニックにしました。
これでどうしても違和感を感じる方はⅡ7に差し替えてもらってもかまわないと思います。
そこだけ変えても問題はないはずです。
あ、もう少しいうと、コーラスの後半も、セッションで使われる一般的なものとは違っています。しかし、その一般的なバージョンは明らかにメロディとかみあっていません。それなりに速いテンポでやればそれほどの違和感はないんですが。